アメリカン・パイ
古い古い歌が
誰が歌ったのかわからないくらい古い歌が
それをつくった人のことも歌った人のこともすべて忘れさられ消えさっても
その歌は残ってるように
幾世代すぎても想いはともに時をこえ歌いつがれて
そこに残っているように
そんなふうに生命の消えぬ限り時の消えぬ限り
いや もしなにもかもが失われ消えても
果てぬ闇の底に想いだけは残るのだ
萩尾望都さんの漫画『アメリカン・パイ』(1976年作品)の
最初と最後に使われている詩(?)です。
あまりにもステキなので、
初めは誰かの歌の歌詞かなとも思いましたが、
萩尾先生のオリジナルだということでした。
よく「座右の書は何ですか?」と訊かれることがあります。
その時に僕は臆面もなく、この『アメリカン・パイ』を挙げます。
なんで漫画が、と思うかもしれませんが、
いろいろな本をあまた読んで きた中で、やはりこの作品が一番好きです。
萩尾望都さんは、最も好きな漫画家で、
もちろん代表作の『ポーの一族』や『トーマの心臓』、『11人いる!』も大好きですが、
どれかひとつ、と言われたら、やはり 『アメリカン・パイ』です。
物語について説明すると長くので、やめますが、
この作品はとてもあたたかいんです。
限りなくやさしい視線で、
死と向き合う女の子とそれを見守る男性の姿が描かれています。
暗い話ではなく、明るいから物悲しい、そんな切ない物語です。
それが決して「お涙頂戴」的な描き方ではなく、
静かに大らかに、愛にあふれたやさしさで描かれているから
決して押し付けがましくなく、それだけに深い感動が残るのです。
もう35年も前の作品ですが、
何度読んでも心がジーンとし、目頭が熱くなります。
だから、これが僕にとっての座右の書。
ある意味で価値観のバロメーター。
この本を読んで、感動できなくなってしまう自分がいたとしたら、
相当やんでしまっているんでしょうね。
よろしかったら、読んでみてください。
http://www.amazon.co.jp/アメリカン・パイ-秋田文庫-萩尾-望都/dp/4253176720
素直に「名作」です。(ひ)
2011/05/24