恵比寿の行きつけのお寿司屋さんのご主人が、「最近の日本人って、おかしいですよね」と嘆いていた。
ご主人は僕と同世代。話もよく合うので、よくひとりで仕事が終わってから飲みにいく。
ご主人が嘆いていたのは、「常識」ということ。
そのお店は、恵比寿の繁華街からは少し入ったところの
通りから入口が一歩入ったところにあり、
値段表も出ていないので、一見さんはちょっと入りにくい店構え。
しかし、ここのところ急に予約で初めてのお客さんがお多く来るようになったという。
どうやら犯人は“インターネット”。
ご主人本人はパソコン関係にはまったく疎く、ホームページなどはあるわけもないのだが、
某有名なグルメサイトで、恵比寿のお寿司屋さんとしては評価が最高クラスに書かれているらしく、どうやらそこから見た人が予約をしてくるみたいだというのだ。
新しいお客さんが来るのはうれしいに決まっている。
だが、問題は「常識」の感覚だ。
予約をしていたのに、連絡も入れずに平気で時間に遅れて来たり、
ひどい人になると来なかったり、ということもあるそうだ。
ご主人は、その客のために仕入れをし、江戸前寿司だから仕込みをして来店を待っていらっしゃる。
ひとりで切り盛りしているさほど大きくないお店なので、
予約が入って“満員になるはず”の日は、常連客でも断らなければならないこともあるらしい。
それなのに平気で遅れてこられては、予定も狂うし、
ましてや来なければ、せっかく用意したものが無駄になりかねない。
「普通は電話一本ぐらい入れるでしょう、
公衆電話しかなかった時代ならともかく、いまは携帯電話だって持っているのだから」。
「一体どういう教育をされているのでしょうね」とご主人。
僕自身も場面はまったく違うが、同じような経験をしたことは何度もある。
採用の面接でアポを入れているのに、
連絡もなく、平気で来ないのだ。
それも若い人ではない。
履歴書とかまで送って来ているのに、何の連絡もなく面接をすっぽかすのだ。
一応こちらもわざわざ時間を開けて待っているのだから、迷惑をかけるという意識はないのか。
僕らの「常識」では考えられない。 年寄りの愚痴か。いや、そんな風には思いたくない。
人と人とはつながっているもの。
どこかでそれが影響を及ぼすこともあるとは思わないのかな。(ひ)